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童話「人々と神様が創った電車」
2012-09-25 Tue 01:11
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「人々と神様が創った電車」



図書室に行った。  
小さな茶色の本があった。
題名があった 「雫詩」 って。

その中のひとつに目がとまった。


ホネストという町がありました。
小さな田舎町、
そこには善良で争いごとが嫌いな、住民ばかりが住んでいました。


みんなの自慢は、黄金の稲の穂と、困った時に助けてくれる神様と、
小さな田舎町を横断して走る、電車だった。


一年に一度だけ願い事を叶えてもらう、そのひとつが電車だった。
電車には、命があった。




プラットホームに 電車の発車を告げるベルが鳴った


「すまんのお 今夜は誰も乗らんようじゃ 気をつけて行っておくれ。」
駅員はそう語りかけた 電車に。


「なぁに、稲刈りに忙しくて、みんな疲れて寝ているんですよ、きっと」
そう、電車は答えた。


「そうじゃのお、今年は豊作じゃ、ありがたいことじゃ」
「はい、もう少ししたら、お米を都会にいっぱい運ぶ、私も大変だぁ」と
電車は、少しも困ったようではなく、嬉しそうに話した。





電車は、忙しかった。
時々、急病人がでたら、救急車の役目もして、特別列車として走った。
だから、子供電車が今年の願い事として、生まれたのだ。


「まだ夜は子供電車は走れんのかのお?」
「はい、まだ足は遅いし、慣れていないし、怖がりだし・・」
それだけは、すこし困ったようだった。



「じゃ、ご苦労じゃが、最終電車、行って来てくれるかのぉ」
「はい、安全運転で行って来ます」



電車は、ピーと、長い汽笛を鳴らし、走り出した。



しばらく走ると、そこは踏み切り
用心しよう、そう思った時。


踏み切りの上に、倒れているご老人が居る!



「あ、ブレーキが間に合わない!!!」



このままでは あの人を傷つけてしまう
そうだ 誰もお客さんが乗っていないんだ


とっさに考えた答えは。

じゃ、私が線路を離れたら、良いんだ!!


お父さん電車は 自分が傷つくのを覚悟で
線路から外れて 田んぼの中に突っ込んだ。



ギギーギー ドドド ドスーン



町のみんなは、大きな音に驚いて家から飛び出しました。
そして、しばらくして、やっと電車の事故だと気づきました。


「うーん」
命は助かったようです。
でも、ガラスも割れ、あちこちが傷つき、動けません。



「大丈夫かい?」
町のみんなは、声をかけてくれました。
「私は、いいんです、お年よりは?倒れていた人は?」



「あぁ、大丈夫じゃ、つまづいた時、頭を打ったようじゃ、命は心配なしじゃ」
「ああ良かった、本当に良かった。」


「助かった老人は、『すまんすまん』と言って、泣いておる」
「いいんです、命を助けることが出来て、良かった」





子供電車は、夜が怖くてお父さん電車の傍には来れませんでした。
やっと、朝になって、お父さん電車の傍まで。
でも、どうすることも出来ません、助ける力がないんです。



町のみんなから愛され、親しまれた電車、
その電車が走れないと、都会へ米も運べない、病人も助からない、本当に困る。




お父さん電車は、話しかけました。



「私の代わりに走っておくれ、線路も無事だったから」
「もう走りたくない、だって、怖いんだもの・・・」


「いいかい おまえは 何のために生まれてきたの?」
「・・・・町のみんなの役に立つため?」


「そうだよ、それが分かっているなら、走ってくれないかい?」
「・・・怖いんだ、だれか線路に倒れていたら、僕おとうさんみたいに・・」


「田んぼに飛び込めないのかい?」
「うん・・・。」


「命はひとつだけど、この命は、自分だけのものじゃ、ないんだよ。」
「命って、自分だけのものじゃないの?」


「ほら、みてごらん、お父さんの体を、あちこち継ぎはぎだらけだろ?」
「うん、右は青で左は赤で天井は黄色だ、不思議だな って 思ってたの」


「これはね、ポンコツとして捨てられたものたちから、集めて作られたからだよ」
「僕も、そうなの?」


「そう、だからたくさんのポンコツさんたちの命も、願いも、体に入っているんだよ」
「でも、やっぱり怖いよ、走るのは・・夜は真っ暗だし・・」


「・・・・。」
「・・・・・・・・。」





ずっと話をして、とうとう夜になりました・・
でも、子供電車は聞き入れてくれません。
お父さんは、困りました、自分の怪我は神様にも、治せないのです。



神様が願いを叶えてあげられるは、一年に一度だけ。
そして、今年は、すこし古くなったお父さん電車のために、
子供電車を願い、叶えてもらっていたから。






町のみんなも、困ったと顔をあわせては、ため息をつくばかりでした。



その時です。
あの、踏み切りで倒れていた老人が、ポツリと。


「わしが悪いんじゃ、すまん事をしたの、だから神様にお願いをして来る」


みんなはびっくりしました。
一年に一度の願い事の約束を破って、頼みに行くと願いが叶っても
命を無くす掟があったからです。


「駄目じゃ!」
「それは、やめておくれ」
「俺だって、そこで倒れていたかもしれん、お前だけが悪いんじゃない」


みんな口々に行くことを止めました、しかし・・老人は


「ありがとうのう、みんな。一度はおとうさん電車に助けてもらった命じゃ
恩返しをしても、ええじゃえろ・・。」



止めるのも聞かず、老人はひとり、神様の住む山に向かいました。





やっと山の麓まで辿り着き、山に入ろうとした時でした。


「老人よ、願いは年にいちどだけじゃ、命はいらないのか?」
「はい、今から山に入り、どうか願いを聞いてほしくて・・」


と、途中まで話した時。


「すぐこの場所から、立ち去れ!」
「は、はい・・あの、願いを・・」


「立ち去れ!」
「・・・はい・・」




やはり駄目だったのだと、二度目の願いは聞いてもらえないのだと・・
老人は願いも言えずに、とぼとぼと町へ帰っていった。



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