悲しい想い出は 忘れなくていいよ。 大切にしまっていたらいい。 前に進む勇気が 君にはあるはずだから。。
短編「桜 舞う時」
2010-03-25 Thu 02:54
Photo by (c)Tomo.Yun
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「桜 舞う時」




あの日 あの時 何故 桜を見たいと 思ったのだろうか・・?




季節は春・・・

永い冬が やっと過ぎ去って

小さな 芽が 背伸びをして 緑のじゅうたんになって

ぼくたちふたりを迎えるように 両手を広げてくれたね



去年 桜の樹の下で 初めて出逢って もう一年が過ぎようとしているね



初めて手を繫いで歩いた 五月の日 

慣れないそぶりがみんなの視線を感じて 恥ずかしいけれど 嬉しいような 

でも やっぱり新鮮で 心ときめいた

このままずっと 未来永劫 歩き続けることが 出来るのならと 小さな手を握り締めた




きみに いつか 話そうと思っている事 ひとつ

子供のころからの ちっぽけな夢

他の人に とっては 当たり前の事にしかならないのかもしれない

でも 私にとっては とても大切で 悲しいぐらいの 願いなんだ




幼いとき 家族とか家庭には 全くの無縁だった 私



だから 誰かが傍にいて 話すなんて そんな ことさえ 知らなかった

ひとりの部屋 静かに刻む時計の音だけが 友だち だった なんて 言えなくて

誰かが 帰ってくることも ただいまの言葉さえ 聞く事が出来なくて

部屋の明りが灯るような 暖かな部屋に戻る事も無く 当然 ただいま も 言えなくて

そして お帰り と その日の疲れを 一瞬で癒してくれる 魔法の言葉も 聞いた事 無くて




だから 小さくても いい 暖かな家庭を 誰かと創りたい それが 子供のころからの夢だった



おはよう 

おかえり 

ただいま 

いってらっしゃい 

いってきます 

おそいね 

はやいね



なんて そんな たわいも無い言葉を交わせる人と ひとつ屋根の下で 居ることが出来たら・・




そんな ちっぽけな 儚い夢を ただひたすらに願うような 私

でも そんな

壊れ 欠けた 心を 初めて 氷が溶けるように 包んでくれる人が 現れたんだ








あの日 あの時 何故 桜を見たいと 思ったのだろうか・・?






桜を 見たい ただ それだけのこと 
 
なのに 何か 気がせかされるように  桜並木の道へ いつもより 早足で向かった


着いた

桜は綺麗に 咲いていた

その姿は 可愛く そして 風に揺れながら 誰かを待つように 揺れていた・・




公園の真ん中にある 一番大きな桜の樹に 目が止まった

薄紅色の透き通るような花びらが 微笑むように咲いていた



桜 満開 

もうすぐ このあたりには 人がいっぱいになって
 
一人でいるには きっと 淋し過ぎて 逃げ出してしまうのかな・・と 



そう思うと 何故 こんなところへ 来てしまったんだろう・・と 後悔も

だから

ひとり 俯いて いつものように その場を去ろうと 思った時



きみが 現れた

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