悲しい想い出は 忘れなくていいよ。 大切にしまっていたらいい。 前に進む勇気が 君にはあるはずだから。。
童話「桜」
2009-04-04 Sat 20:13
Photo by (c)Tomo.Yun
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図書室に行った。  
小さな茶色の本があった。
題名があった 「雫詩」 って。

その中のひとつに目がとまった。





「桜」




じっちゃん なんで この桜 咲かんのじゃ?



わしも おなじように ばあちゃんに 聞いた事がある・・

なんも 答えてくれんかった・・




じゃがな 亡くなる前 たった いちどだけ 話をしてくれたんじゃ

わしも もしかしたら そう長くはないかもしれん

じゃから おまえに いちどだけ 話をしておこうかの・・






昔々・・ の ことじゃった。






この村に若者がおった

万次郎という それは 好青年がおった

好きな人が いとったそうな 桃枝さんという 可愛い人がおったそうな





ある日のこと

戦争が始まって 徴兵されて 戦地に赴くことになった万次郎は

想いを告げたくて 桃枝さんの家まで行ったそうじゃ





でも どうしても 言えなんだそうな 

いつ死ぬか分からん 戦地に行くのだからのう





声もかけず 会わずに引き返そうと 振り返った時

そこには 桃枝さんが 立っていたそうな 

万次郎を見つめて な





何も言えんかった お互いに ただ じっと 見詰めあって いたそうな





そして 万次郎は一言だけ



「おさらばです」


と・・




想いの全てが こめられた言葉じゃった

もう それ以上は 何も言えんかったそうな



戦争に行くんじゃ 

もう 二度と逢えんと 別れの言葉を 言ったのじゃな





歩き出した 

桃枝さんを見詰めて

真向かいに立っていた 

横を通り過ぎ おじぎをしたとき






「待っています・・・    いつまでも・・・」



と・・


桃枝さんが 泣きながら 言ってくれた そうな






万治郎は 

胸が一杯になりながらも 答えたそうじゃ


「帰ってきます  必ず 生きて・・」



と・・



同じように 泣きながら







それから 戦争が続いて 食べるもんも だんだん無くなって

いつかしら 戦闘機や爆撃機が 来るようになった

平和だった この村にもな








・・・・・・・・・・・・・・






万次郎が 


戦地に赴いて 3年が経った 春   戦争が終わったんじゃ




左手の指をを失くしたけれど 

生きて 帰った



約束を 守ってな。。







桃枝さんの 家に向かった 

けれど 

家は無かったそうな





空襲で 焼けてしまったそうな

残ったのは 

桜の木が 一本だけ






そのとき 桃枝さんは 爆撃で 亡くなったそうな

助けに行った ばあちゃんが 聞いたそうな


最後の言葉は





「ごめんなさい・・」






その 一言だった そうな・・





きっと

万治郎との 約束を守れなくて 侘びたのじゃ な・・







それを聞いた 万治郎は何も言わんかったそうな・・





じゃが 自分の家を処分して 

その金で 

桃枝さんが住んでいたところの 土地を買い 家を建てたそうな







桃枝さんと 一緒に 暮らしたかったのじゃろう・・






桜の木は 桃枝さんが 亡くなる前までは 

それは きれいに咲いて いたそうな

毎年 春を迎えると・・




じゃが 桜も悲しかったのじゃろう 

あんなにも 優しかった桃枝さんが 亡くなってからというもの

一度も 花を咲かせることは 無かったそうな





もう・・

50年 一度も  な・・。








そんな時じゃ






同じように 50年も独身ですごした 万治郎が 肺炎になって

明日をも知れぬ命じゃ と 聞いて

ばあちゃんが 万治郎さんの お見舞いに行ったそうな







今まで 何も言わんかった 万治郎さんが 



ポツリと・・




「桃枝さんに ひと目 逢いたかった」 



と・・






そう言うものじゃから・・みんな 泣いてしまってそうな・・









そん時じゃった



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